君のための嘘
「お腹いっぱい……ご馳走様でした」


お昼を軽く済ませたせいか、たっぷり食べてしまい罪悪感に襲われる。


「どういたしまして」


ラルフはコップに半分以上残っているビールを少し飲む。


ビールを頼んだ割には、ほとんど手を付けられていない。


「では、行こうか」


席を経った時、奥の座敷のテーブル席の方から歩いてきた家族が、夏帆たちの横で立ち止まった。


「ラルフ!」


透明感のある柔らかい声がラルフの名を呼んだ。


ラルフはいつもの涼しげな眼差しを、少し大きくし彼女を見た。


「美由紀……」


美由紀と呼ばれた20代と思われる女性は、一緒にいた男性と小さな4才くらいの女の子を連れていた。


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