君の、瞳に。【短編】
不思議少年



初めて出会った日。


それは、台風の日だった。


「…何してんですか?」


そう、初めて声をかけたのはあたしの方から。



少しショボい小さな公園。


そこにフードをかぶって丸まってる男……いや、同い年くらいの少年がいた。



「……」

「あの…今日、台風ですよ…?」

「涙」

「…は?」

「どうして、泣いてるの?」



そう言われて、グイッと自分の涙を拭き取った。



「…な、泣いてません。雨です…っ」

「へえ」



──その瞬間だった。


「っ」



何故かグイッと腕を引っ張られ、ペロッと頬を舐められた。



「……」

「涙の味する」

「……」



驚いて声が出ない、というのはこの事かもしれない。


そう、まさにあの時、あたしは驚いて声が出なかった。




< 1 / 54 >

この作品をシェア

pagetop