【十の瞳】
そして、ある結論に至る。
この部屋の中で、手をつけていない場所が、一つだけあった。
平三郎と思われる首なし死体の胴体が入っていたクローゼットである。
改めてよく観察してみると、クローゼットの中に、あまり衣類はかかっていないようだった。
十二愛は、ドレスで埋め尽くされた自室のクローゼットを思い返し、それを不審に思った。
吊るされた服を両脇に寄せると、ほとんどクローゼットとしての役割を果たしていないと言ってもいい。
マスターのクローゼットの中は、空間ばかりだった。
それも、人が入れそうなほどの――……。
このデッドスペースはなんだ?
十二愛は、レースの白い手袋が汚れるのも構わずに、血液で黒ずんだクローゼットの底板を手前にスライドさせた。
板は、思いのほか簡単に外れ、地下へと続く階段が出てきた。