【十の瞳】



聞けば、彼は調理師の専門学校に通っているのだという。


「昨日……ありがとな、殴ってくれて」
 

彼にマゾッ気があるわけではない。


「あの時……あんたに殴られて、目が覚めたよ。


……結局、藤浦さんはあんな事になっちまって、タキさんには、


その……心から申し訳ないと思ってるけど……」
 

責任を感じているのだろうか、彼もはじめのうちは口数が少なかったが、


作業が進み、品数が増えるに従って、陽気なお喋りが戻ってきた。


緊張が解けてくると、次第に僕も彼にタメ口を利くようになっていた。


「なあ、コロってさ、大学生?」


「うん、まあね」


「どういうとこ?」


「どういうって……別に、普通の大学だよ。


小難しい講義がたくさんあって、レポートが山のように出る」


「うっひゃ、めんど~ぅ! 


ま、俺んとこもレポートは多いかな。


実習の度にあれこれ計算して出せとか言われるし……」



< 80 / 150 >

この作品をシェア

pagetop