【十の瞳】
聞けば、彼は調理師の専門学校に通っているのだという。
「昨日……ありがとな、殴ってくれて」
彼にマゾッ気があるわけではない。
「あの時……あんたに殴られて、目が覚めたよ。
……結局、藤浦さんはあんな事になっちまって、タキさんには、
その……心から申し訳ないと思ってるけど……」
責任を感じているのだろうか、彼もはじめのうちは口数が少なかったが、
作業が進み、品数が増えるに従って、陽気なお喋りが戻ってきた。
緊張が解けてくると、次第に僕も彼にタメ口を利くようになっていた。
「なあ、コロってさ、大学生?」
「うん、まあね」
「どういうとこ?」
「どういうって……別に、普通の大学だよ。
小難しい講義がたくさんあって、レポートが山のように出る」
「うっひゃ、めんど~ぅ!
ま、俺んとこもレポートは多いかな。
実習の度にあれこれ計算して出せとか言われるし……」