リアル






「生野さん」


煙を吐き出しきったタイミングで若月が走り寄ってきた。


こんなに常に走っていても疲れないのは若さ故だろうか。


生野は煙草を備え付けの灰皿に放り込みながら若月の足下に目を向けた。


「言われた通り、通話履歴調べました。登録されていない電話番号は三件あったんですが、どれも不正に購入されたものらしく、契約者は特定出来ません」


若月は生野に一枚の紙を渡しながら言った。


「そうか。だが、そいつが協力者とみて間違いないだろう。後は、捕まえてから吐かせてもいいしな」


「でも、まだ証拠はいまいち揃いませんよ? 憶測の域を出ません」


若月は眉を下げた。


「取り敢えず、事件当日のアリバイはないんだ。それで引っ張って、車内を調べる」


「強引過ぎますよ。和泉本部長にまた怒鳴られますよ?」


生野は寿々子の怒鳴り声を思い出してからにやりと笑った。


「犯人逮捕後なら子守唄に聴こえるさ」


生野はそれだけ言い、しかるべき書類の手続きへと向かった。









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