リアル


それが、両親を殺した男の唯一の手掛かりなのだ。


その男を見付けたら、この手で両親と同じ目に遭わせてやる。


それだけを考えて今まで生きてきたのだ。


それを果たすまで、孤独の中に身を沈め、一人で生きていく。


ずっとそう思い、友人や恋人は勿論、少しでも親しいと言える人間すら作らないできた。


職場も住む場所も定期的に変えた。


いつかは人を殺す自分に親しい人間などいらないと考えてきたのだ。


でも。


後頭部には薫に掴まれた感触がまだ残り、幼い頃から話すことのなかった他愛のない話をした感情も残っている。


その時間は、何とも言えない空気を感じた。


此処にいる。


はっきりとそう感じられたのだ。


でも、自分はやはりいつかこの手を汚すだろう。


この事件が解決して、そして自分が望む結果に繋がらなかったとしても、その時はまた引っ越そう。


隆は写真を抱き締めた。


「必ず仇は打つよ。父さん、母さん……」


隆の声は静かな部屋に響いた。





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