∮ファースト・ラブ∮
「少し青くなっているけれど、たいしたことはないわ」
それからあたしは1限目の授業を受けずに保健室にいた。
もちろん、麻生先輩がついてくれている。
今、保健の先生に、尚吾さんに強く掴まれた腕に湿布(しっぷ)を貼ってもらっている真っ最中。
「ありがとうございます」
麻生先輩がお礼を言って、あたしは保健の先生にお辞儀した。
「さ、ふたりとも、教室に戻りなさい」
湿布を貼り終えた先生にうながされて、あたしと麻生先輩は保健室を出る。
「手鞠ちゃん」
静かな廊下に立つと、麻生先輩は口をひらいた。
それは、とても重い口調だった。
麻生先輩の顔を見ようと向き合えば、先輩は決意をあらわした目であたしを見つめている。
「今日の放課後。
話がある」
――――――――話。