シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 


緋狭姉!!!


「紅皇と相対すれば…紫堂玲の命はないだろう」


「玲くん!!!?」


芹霞が裏返った声を上げる。


何てことだよ。


そして櫂が相対するのは、恐らく…久涅。


櫂の壁になれる俺達が…足止め食らうわけにはいかないんだ!!!



銃弾の音。


あちこちから聞こえるのを思えば、広範囲に及んでいる。


その上で桜…あの二重人格チビを相手にしてるというのかよ。



不思議と…人影はないあちらの場所を思えば、桜華と…同じ現象が起きているのか。


《妖魔》だとか言ったっけ。



そんな時…朱貴と目が合った。


桜華で《妖魔》だとかいうのを祓った小猿の師匠なら…なあ、広範囲のものを瞬時に吹き飛ばせるよな?


俺は…目に、心を込めた。


目で訴えた。


頼む。

桜の力になってくれ。


あいつを…櫂の、玲の元に走らせてやってくれ。


あいつはきっと煩悶しながら闘っている。


あいつにとっての屈辱は、櫂から離れた場所で闘うこと。


屈辱を与えられて…時間切れにはさせたくない。


朱貴は…不快そうな顔をしたが、


「翠くんは…そこのお嬢さんとあちらで。はあ…一昔前の、ウルウルチワワを思い出しました…」


ウルウルチワワ…。


俺のことか!!!?



怒りが込み上げたが…此処は抑えねばなるまい。


朱貴の気配が此の場から消えたのを確認しながら、俺は…ピアスを偃月刀に顕現させた。


くつくつくつ。


喉元で含んで笑う銀色氷皇。


その瞳が…真紅に染まった。
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