シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

手には双匕首。

制裁者(アリス)の…小さい敵。


凱だろう。


傍観に来たわけではないことは…真紅の敵意を見せる瞳の色で判る。


しかし――

今、何を口にした?


「α-BRより強力で副作用が少ないけどさ…知ってる? それが…市販薬として出回っている…いや、出回っていたという意味」


それは無邪気な笑い。


「君もその内…紫茉に取り込まれるよ?」


それは悪魔じみた歪んだ笑いに見えて。


「取り込まれる…?」


私の問いに、凱は僅かに目を細めた。


明らかに…上から目線だった。


「それね、紫茉の父親が…紫茉の為に開発したものなんだ。皆…紫茉を助けようとして死んじゃった。ふふふ、紫茉は忘れちゃってるけどね」


何を…言いたいんだろう。


「その成分…知ってる?」


小首を傾げて、私を見る。


「ねえ…此の世で一番大きい力を持つ"呪術"って何だと思う?」


私は目を細めるばかりで。


「あははは。何度も見てきたんじゃないの?

"生ける屍"、"共食い"…」


「蠱毒……?」


すると凱は大笑いを始めた。


「頑張って…紫茉の力となってね~!!!」


私はポケットから怪しい…風邪薬の小瓶を取り出した。
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