シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「あの…あたしは人と待ち合わせをしているんですけど」


「はい。"彼ら"から十分聞いています。だから私はいるんです、仕方が無く」


さっぱり意味が判らない。


「こんな状況だから本当に仕方が無く。こんなどうでもいいこと…したい人間がすればいいことで、本来私の役目ではありません。そこの処間違えないで下さいね」

にっこり。


まさしく慇懃無礼。少し怒りが湧いた。


5日前、我が桐夏(トウカ)学園の学園祭が終了した。


今年は姉妹校である桜華(オウカ)学園と合同開催ということで規模が大きく。


その中で、櫂達が突然…とんでもないライブをやらかした。


シークレットゲストである人気バンドに対抗し、過剰過ぎるお色気パフォーマンスを見せつけて、代わる代わるペアを変えて2人組で歌い続けた結果…多くの観客を病院送りにしてしまった。


そして、学園祭明けの2日間の振替休後から、櫂と煌は…何故か学校を休んで3日。予定では…彼らの休みは暫し続くらしい。


そして同時に現れた、特別に親しいわけではない榊さん。

あたしが1人で行動する時は常に傍に居る。


由香ちゃんがいない時に限って現れる。


あたしはほとほと…高校で疲れ果てているのに。


――神崎さん、紫堂くんの携番教えて!!

――家に遊びに行ってもいい!!?

――ねえねえ、紹介して全員!!!


立つ鳥が後を濁しきってくれたおかげで、学校では血走った"犠牲者"達の質問攻め。


見たことない人達までもが、何故かあたしの"マブダチ"を言い張り、勝手に腕を組んでくる。


昔から、こうした類の絡みに慣れてしまっているとはいえ…あのライブによって櫂と煌は無論、そして当初予定では唯の見物客であったはずの玲くんと桜ちゃんの人気までもが鰻上りとなり、もう収拾つかぬ程に異常な熱を孕んで…身の危険を感じたあたしはとにかく走って逃げ続けた。


あたしはただ、ライブを見ていただけの、彼らの幼馴染みなだけなのに、なんで本人達は不在で、代わりにあたしがこんな大変な目に遭うんだ!!


――頑張れ~!!


弥生も由香ちゃんも、完全他人事で笑うだけだし。


今日で3日間。


"彼ら"がいなくても、静かな生活は訪れていない。

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