シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

・座席

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「玲…お前、随分とご大層な車の趣味してるんだな」


渋谷駅前、公衆トイレに突っ込みそうな勢いで、止まっていた青い車。


どうやら玲くんは、この車でお迎えにきてくれたらしい。


「判ってて言うなよ櫂。僕の趣味じゃないよ、この色」


何とも艶めかしい曲線美。


すごく上品で優美で…玲くんの雰囲気とよく似ている。


決して安価なものではないだろうが、あたしにはこのエンブレムを見ても、何という車種なのかさっぱり判らない。


「アストンじゃん」


目をきらきらさせて言ったのは煌で。


煌でさえ判る車を、あたしが判らないのは何か悔しい。


「煌は車好きだったっけ?」


玲くんが苦笑すると、


「この車は特別。俺の憧れ」


へえ。


煌も男の子らしい処があったんだ。

唯のワンコではなかったらしい。


「なあ玲。何処から武器出てくるんだろ」


武器?


「内部はどんなコンピュータ仕立てなんだろ」


コンピュータ仕立て?


「何だよ、芹霞は気がつかねえのか!? アストン・マーティンと言えば『007』、ジェームスボンドが乗ってるあのハイテクボンドカーじゃねえか。現物見たのは初めてだけど、見た目普通の高級車だよな、やっぱし」


そういえば。


煌はジェームスボンドのファンだった。


鍛えられた肉体とド派手なアクションが、彼の"漢(オトコ)"のツボに嵌るらしい。




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