シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

・刺客 桜Side

 桜Side
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私には、玲様から調査を頼まれていたものがある。


それは数年前、東京都全域において、原因不明で全電力が止まった時、被害にあった企業は、どんな企業で、具体的な被害状況はどんなものだったのか。


電力が急停止した時間は、僅か一瞬。


しかしその間に、日頃の防御対策が不十分だった企業は、大小問わず…機密事項の重要データ損失や、株為替などの流動的経済損益は甚大であったと噂では聞く。


電力で厳重に管理されている反面、その電力に万が一のことが一瞬でも起こったら、人間は為す術もないのが現状。


弱肉強食のこの世界。僅か1秒に満たぬ僅かな間に、形勢図が塗り替えられることだってありえるのだ。


紫堂の全情報類は、全て玲様の管理下にあったから、事なきを得ていたが、"約束の地(カナン)"帰還後、櫂様と玲様は、停電によりあの土地の人工知能が自我意識を持ったのは、本当に偶然の事象だったのかと疑いを持たれた。


実際、今も尚あの人工知能を解析されている玲様曰く、構成されているプログラムそのものの難易度は高いわけではないらしく、それなら2ヶ月前に、遠坂由香が作ったものの完成度の方が高かったらしい。


それが急速度で突然変異したのは、主たる者への"想い"だけではなく、明らかに外部的干渉があったのではないかと、櫂様も玲様も推測されている。


その干渉が、停電であるとしたら。

その停電が、偶然ではなく必然的事象であったら。


そこに"誰か"もしくは"何か"の意思があったのだとすれば、それはどういうもので、停電はどんな効果をもたらすものだったのか。


――それを見出すためには、被害者…或いは、被害状況に何らかの共通項があるはずだ。桜、頼むね。


本社に出向き、正門潜って常識的にアポを取り面談する…そんな正攻法が通用するならば、玲様は私を使わない。


そう、私達が知りたい部分が、被害者にとって"闇"にあたる部分だからこそ、…私という裏世界の人間が必要になってくるのだ。


私はポケットから、黒い手帳を取り出す。


玲様が調べた"被害者"であろうと思われる一部と、私が力ずくで情報を仕入れた際に出てきた名前を書き込んでいる。

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