シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


芹霞にも当然懐いた小々猿が――


「……。おい小猿。どうしてあれは、芹霞の胸元に入ってる!!!」


「あいつは寒がりだからな」


「ああ、あたしも何かぬくぬく。可愛いね、こいつ」



芹霞が小々猿の頬に唇寄せたら、それを見ていた他の小々猿全員が全員、瞬時に芹霞の正面に横一列に並んで、自分の頬を差し出した。


「何、何、何!!?」


この――


エロ猿共が!!!


気分損ねた櫂が芹霞を引き寄せ、えげつなく笑う玲が芹霞に代って7匹の前に立つと、その殺気めいた空気に、7匹は目を見開いて逃げ始め、テーブルの上を駆け回る。


どれかがリモコンのスイッチを踏んづけたのか、突然電源が入ったテレビには、奇しくも偶然…Zodiacの新曲PVが流れ始めて。


それを耳にした玲の顔から一気に笑いが消え、ついには"コード変換"をやりだしたのか、玲の手が青い光に包まれると、突然7匹は紙切れに変わって消え失せた。


床に落ちた紙切れを手にしてみれば、間違いなく何かの符呪で。


自ら符呪に戻るなんて、余程玲に恐怖を感じたらしい。


「簡単に還るじゃないか」


七瀬がぼそりと呟いた。


「還らないんだよ、俺の時は!! したいことして飽きて勝手に還るの、ひたすら待っているんだ!!!」


悔しそうな小猿の声。


「要するに…なめられているわけだね」


遠坂が追い討ちをかけた。


「お、お前達…この俺のこと、"出来損ない"だとか思ってるんだろ!!! 式すら上手く操れない癖に、紫堂の処にのこのこ現れて、反対にやりこめられるなんて、なんて阿呆なうつけ者だと!!!」


誰も何も言ってねえのに、勝手に憤った小猿は、突然口早に怒り出した。


「お、俺はな、紫茉にも出来ない凄いことが出来るんだぞ!!?」


引き合いに出された七瀬がどういうレベルかは判らないが、七瀬は慣れたような…心底疲れ切った顔をしていて。
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