シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

自分の分厚い古語辞典を盾にするように俺の前に翳した途端、



ダンダンダンッッ!!!



「!!!」


窓から飛び込んできた数本の刃物が、深々と突き刺さる。



教室から悲鳴が飛ぶ。



間髪入れず玲は、古典の教科書を、刃物が飛んで来たその方向に振り投げて。


窓の外に飛び出た途端、宙で再び刃物が突き刺さる教科書。


それが垂直落下を見る前に、玲は窓と…暗幕カーテンを素早く閉めた。


そして教卓を傾かせ、窓を防護する。


儚げな美少女が軽々と教卓を持ち上げる様に、教室ではどよめきが起こっていたが、玲はお構いなしだ。



「これ…」


煌が辞典に突き刺さった刃物を引き抜くと、強張った声を出す。



細長い、メスのような刃物。


柄には薔薇の模様。




「これ…制裁者(アリス)の!!?」




「もう…始まったのかよ」


それは玲から漏れた、悔しげな声で。


「本気ということか…」


硬く握り締められた拳。

そして凄惨な表情。


それは何に向けて?


俺と煌が怪訝な顔を向けた時――


「蝶!!?」


びくんと大きく身体を震わせた玲の目は、廊下に向けられていて。



「きゃあああああ!!!?」



上がった悲鳴は…



「芹霞!!?」



俺は机を飛び越え、芹霞の居る教室に走った。
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