シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 


「!!!」



気づいたのは――

偶然だった。


いつも通りに振舞われている玲様。

しかし芹霞さんを避けている玲様。


そんな不可解な玲様を見ながら…


私はあることに気づき、人知れず呼吸を整えた。



玲様が芹霞さんを拒まれている理由…

それが判ったような気がしたから。



"誰"なのかは判らないけれど、玲様確かに…櫂様が狙われていたことを知っていたのなら。


だとすれば――

"何故"なのかは予想はつくだろう。



それは完全なる死角。


私しか見えない角度。



私は皆の視線から玲様を隠すように近づいて。



ポケットから黒いハンカチを取り出して。


それを…襟から覗く、玲様の肩にあてた。



「……!!!」


びくん、と反応する玲様。



鳶色の瞳が、私に向けられる。



そこには、強い意志が秘められていて。



私は――


静かに頷いた。




「どうしたよ、桜」




能天気な焦げ蜜柑。


私は玲様の襟元を正し、そして捲り上がった袖を直して上げた。



玲様が…息を飲む音が聞こえてくる。



「汚れを拭いていただけ。女性…だから」



そして私はハンカチを畳んで、ポケットに戻した。



< 314 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop