シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

更には、見計らったかのように現われる…

夥(おびただ)しい数の刺客。


私達に考える暇を与えず、玲様を暖かい場所で休ませる暇を与えず…問答無用に次々と来襲してくる。


その強さは大したものではないけれど。


オーナーに無許可で忍び入った建物内での刺客との乱闘は、特に銃撃戦ともなれば、素人をパニックに追い込み、更には苦悶に叫び続ける玲様の声とが、公共デパートだろうとも…私達に長く留まることを許さない。


小さい建物でも大きい建物でも、オーナーに懇願すれば拒まれ、無許可で入り込むだけで速攻追い出され、買い物すら出来ず。


更に櫂様は、あまりにも顔が知られすぎていた。


櫂様の素性を知らぬ者でも、その美貌は目立ちすぎた。


そこに刺客。


完全な営業妨害と、器物損壊になるのは判る。


だけど刺客に狙われる身の上なのはいつものこと。


紫堂が背景にあればこそ、損害の分以上の謝罪と保障は後日きちんとなされ、だからこそ許され続けてきたのだ。少なくとも、東京においては。


しかし今。


何をどうしても、"紫堂"の力は効力がない。


櫂様に向けられるのは、困惑と…嘲りすら見える。


ありえない、扱い。


何かがおかしい。


そんな中においては――

玲様の治療はおろか、休ませることも出来ない。


あの玲様専用のニトロがなければ、玲様の心臓はもたなかった。


これだけ声を上げられて、これだけ身体を痙攣されて。

それでも心臓が動いていられるのは、薬の力のおかげだ。


その効能がどれだけで切れてしまうか、私は判らない。


1分先か…1時間先か。


それまでに。

一刻も早く、玲様を休ませねば。

早く、錯乱を止めねば。
< 370 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop