シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


「意味くらい判れよ、阿呆タレ。ああ本当にもう」


そして苛立たしげに。


同時に妖しいくらいに瞳を揺らしてくるから。



お願いだから――



「何度言えば判るんだよ?

俺はお前が好きなんだ。

こっち向かせたくて仕方が無いんだ」



その顔で――


迸(ほとばし)るような色気出して――



「俺の願いなんて決まっているだろ!!!


――俺は!!!

お前が欲しい、それだけだ!!」



そんなことを言わないで。



「……???」



煌の手が、突如あたしの頬から離れた。



「"絶交"って、拒まねえ?

で、真っ赤っか?」



ばれるなばれるな。



「……」


ふうっとあたしの耳に息を吹き掛けてくる。


「!! ンやっ!!」


身を捩って声を上げれば。


煌は複雑そうに何か考え込んでいて。


「どうして手が出てこないんだ? 

何で突然? 俺、喜ぶべき?」


何やらぶつぶつ呟いていて。


「だけど…ぬか喜びっていうの、学習したし…」


「は、早く行こうよ、煌!!」


煌の服を引っ張って歩き出そうとした時、木の枝に煌の鬘がひっかかって落ちた。


中から現われる鮮やかな橙色に。


突如あたしの心は、"安心"に包まれた。


「てももしかしたら…。

…もしかして…ちょっとは意識始めた?」


後ろから抱きついてきた、オレンジワンコに。



「――盛るな、発情犬!!!」


肘撃ちを喰らわせた。



「は!!?」


煌は訳が判らないという顔をして深く考え込みながら、落ちた鬘を被り直し。


「あ、まあ…今は確かに救出だ。ほらいくぞ」


手を差し伸べてきた。


真っ黒な頭に、煌の精悍な顔。


「手…繋ぐの?」


「その方がすぐ守れる。担いでもいいけど?」


何か…煌の手を取れなくて。


「警戒するな、何もしねえから(今は)!!」


最後に何か、心の声も聞こえてきたけれど。


それでもあたしはその手を取れなくて。


恥ずかしい、んだ。
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