シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

何てこと、何てこと!!!


櫂様に繋がるはずだったのに。


更には芹霞さんと玲様だけを、何があるか判らぬ危険な場所に放ってしまうなど。


バンバンバン。


芹霞さんのように壁を叩けど、反応はない。


壁の向こう側から、音すら聞こえない。


顕現した裂岩糸は、壁を傷つけることすら出来ず。


"約束の地(カナン)"と同じ特殊素材であるならば、力をも吸収してしまうものだとしたら。


この壁の気紛れを、ただ待つしか術はないというのか?


「小猿クン。君の式神クンは、この壁を壊すことは出来ないのかい?」


遠坂由香から尋ねられた皇城翠が、床におろおろしている式神に顔を向ければ、式神は揃って首を横に振る。


「この壁の素材が…式の力だけを純粋吸収するから破壊まで出来ないらしい。とりあえずま、此処には2体しかいないし、紫堂櫂と紫堂玲の式神は一時消滅したから召喚にも暫く応じないし…5体だけでは、まず何も出来ない」


気が重くなるような沈黙が流れた。


そして。


それを打ち破ったのは、遠坂由香で。



「いいこと思いついたよ、ボク!!!」


彼女は1つ柏手を打って。


「小猿クン。君は(どうしようもなく役立たずな)超能力があったね、確か」


「う、うん? なんか心の声が聞こえたような?」


「心の声なんか何も聞こえない、聞こえない。ねえねえ、そこの壁にぴったりくっついて立って。そうそう。じゃあ行こうか、はい!!! 瞬間移動で向こうにポン」


「「は!!?」」


私と皇城翠が同時に声を上げた。

< 460 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop