シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


朱貴は…敵だったのだろうか。


元々好意的ではなかった。


緋狭姉や氷皇、久涅との知り合いらしいけれど、友好的な雰囲気はなかった。


緋狭姉でさえ、櫂を追い詰める側の今、朱貴が敵側であっても…驚く程のことでもないだろうけれど。


紫茉ちゃん達でさえ謎の男を、あたし如きが解き明かせるはずはない。



ユーティリティーと隣り合わせになっている部屋に、雪崩れ込むようにして入ると、櫂の体があたしに向かって倒れてきた。



同時に――



「芹霞、お待た………」



玲くんが出てきて、あたしと櫂を見て言葉を失ったようで。



「玲くん…お願い助けて」



あたしの声は涙交じりで。



「誰だ、誰にやられた!!? 


僕に掴めない…完全に"消せる"気配を持つ奴は誰だ!!?」



鳶色の瞳に、強い怒りが生じていて。



「朱貴…」



端麗の顔が、ひくんと反応した。



「朱貴が帰ってきて…居間で、煌達が…紫茉ちゃん達も、朱貴を止めようとしているけれど。あたし1人では櫂を守れないから…玲くんに…玲くんなら…」


嗚咽が込み上げ、しゃくりあげた。

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