シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

「煌、大丈夫か!!?」



その時、遠坂を担いで玲がやってきて。


遅れて櫂も現われた。



「大丈夫? 怪我はない、芹霞!!!」



遠坂を地面に下ろしながら、いつも通り芹霞を心配する玲は…ようやくいつもの調子に戻れたらしい。


何とも複雑な心境だけれども…気分は悪くはねえ。


…良くもねえけれど。



櫂が目を細めて、尚も動き続ける女の手を見ながら、真似するように指を動かしている。



「あった、胸ポケットに生徒手帳!!! やっぱりこの子は、紫茉ちゃんが言ってた楓ちゃんだ!!」


芹霞が得意げに叫んだ。



七瀬の電話は聞いていたけれど…


出来すぎやしねえか?



しかもこの女…



「黒髪下げの眼鏡じゃないね。髪…解いて、眼鏡かけてない」



玲が、淡々と述べた。



「桜華の猟奇事件に共通する被害者の格好をしているのは、加害者であるといい張る…この上岐妙…だけだね」



玲の顔が冷たい。


珍しいよな、玲が女に冷たいのは。


名前もフルネーム呼び捨てだし。



何だろう、何か怒っているんだろうか。


玲は、一線を引いている。


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