シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「師匠…」


遠坂が八の字眉だ。


こいつも櫂からの話を聞いている。


何も言えねえらしい。


深く傷ついた玲の顔。


判るけどさ。


よく判るよ。


俺も同じ思いだ。


桜だってそうだろう。


櫂を追い詰めたのは、俺達の不甲斐なさだ。


俺達が確り櫂を守れれば、こんな事態にはならなかったはずだ。


相手の力も、権力も、奸計も…全ては俺達の知らぬ間に準備がされていて、その中で踊らされている俺達は――


滑稽な道化師以外の何物でもない。


――全ては"必然"、だ。


もっと、絶対いい案があるはずだ。


――それ以外では、緋狭さんに立ち向かえない。


少なくとも…桜華に来るまでは、櫂にも戦意があったんだ。


今回、芹霞の身の上も問題になっているから…芹霞を久涅に渡さない為には、何が何でも氷皇の言ったゲームに勝たなければならなくて。


だから櫂は、芹霞の為に何が何でも勝たなくてはならなくて。


だからこそ、緋狭姉との敵対も受容した様子だったのに。


あの女…そう、上岐妙だか一縷だか訳判らねえ女の話を聞いてから、櫂に変化が起こったんだ。


焦りと…絶望。


訳が判らない俺には、そこまでの感想にすら至っていなかったけれど、櫂は…かなり深刻に受け止めていたようだ。


何のどんな部分で何を考えたか、俺にはさっぱり。



そして言ったんだ。

決意めいた顔で。



切り札のこと。
< 720 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop