シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「そろそろいいか?」
朱貴の声に、2人は頷いた。
「2人共…戻ってきてね?」
2人の上に覆い被さるようにして、2人の頭を両腕に抱き留めた。
「大丈夫だ、芹霞。心配するな」
「紫茉ちゃん…」
「戻ってきたら…ご褒美頂戴ね?」
「玲くん…。うん、ご褒美ね!!」
「ふふふ、甘い甘い…蕩けるようなご褒美がいいな」
「うんうん、甘い甘い蕩けるようなご褒美ね?」
俺を横目で見ながら、飛んでもないことを言い出した玲。
そして俺の前で笑顔で約束した芹霞。
絶対…芹霞の頭の中には、甘い菓子しか浮かんでいないはずだ。
だけど玲の求める"ご褒美"は、食い物なんかじゃない。
こんな時でも玲は…俺を煽って、俺の考えを改めさせようとしているらしい。
だから――
俺は表情を崩さない。
必死な玲を見ればみる程、俺は玲を守らねばならないから。
揺らげないんだ、悪いが。
玲が顔を曇らす中、朱貴が言った。
「もしも、俺が危険だと判断したら、強制覚醒させる。いいな?」
「「はい」」
2人は頷き…目を閉じた。
それを確認して、俺は芹霞の手を引き、朱貴に声をかけた。
「俺は、これから煌を探しに行く。その間、どうか2人の身体を頼む」
俺は芹霞と頭を下げた。
「いいのか、俺を信用して。お前はまだ…俺に対する猜疑心が完全には抜けていないはずだ」
何処までも…鋭い朱貴。
だったら、俺だって言ってやる。
「此処に七瀬がいる限り、お前は手出しが出来ない」
にやりと笑ってやれば、途端に朱貴が苦虫を噛み潰した顔をする。
この男が崩した表情をするのは…爽快かもしれない。
「……早く行け。"親玉"が乗り込む前に」
少し怒ったような口調からすれば、やはり図星だったらしい。
カマをかけただけだったんだけれど。
俺はくすりと笑いながら、保健室を出た。