シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

「『戯曲 黄衣の王』…紫堂くんは知ってる?」


俺の中で――

何かが弾けた。


榊の目が抉られた時。


氷皇が呟いた"黄衣の王"という単語は、芹霞の比喩によるものではなく…書物名を暗示していたのだろうか。


だからその後、執拗に俺達を扱き使って調べさせようとしたのだろうか。


「それって何だよ。戯曲って…演劇?」


「そうだよ、如月くん。見るものを発狂させるという呪いの戯曲。それは知る人ぞ知る…古来から恐れられている、戯曲という名のれっきとした魔書だ。

そんな闇の書物が…黄幡家に伝わっている。そしてそれが保管されている黄幡家の書架は厳重管理されていて、直系くらいしか目を通すコトは出来ない。俺なんかとてもとても…。

その戯曲は、第2部を通読すると、発狂すると言われる曰く付きのもの。それを読んでいた直系が…憎悪に狂った上岐妙に殺されたんだ。簡単にね」


くつくつ、くつくつ。


「生きているのか、あのイチルは」


「ふふふ、どうだろうね。生きていたとしても、きっと…君は判らないよ?今の今までイチルという存在を忘れていた薄情な君なら…今のイチルの姿を見つけ出すことは出来やしない」


それは――



「さあ、紫堂くん。

これらの前提から導かれるものは何?」



憎しみのような嘲り。


そんな時、電子音が鳴り響いて。


「ああ、俺の携帯をタイマーにしてたんだ。時間がきたようだね」


携帯画面を確認して、再度ポケットに入れた。



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