シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

・拒絶 玲Side

 玲Side
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名前を呼ばれたような気がして、僕は顔を上げた。


しかしそこには誰もいない、縹渺とした荒れた場所。


僕と…"エディター"しかいない、荒んだ世界。


永遠の…監獄。


第三者の声など…気のせいだ。



「どうして…泣いているの、私の王子様」


言われて初めて、僕は涙を流していたことに気づく。


何だろう。


酷く切なく、酷く哀しい。



「王子様は、いつも強く凛々しく。

泣いてはいけないわ?」


白く冷たい指先が僕の目尻から頬に滑り、僕は振り払うように頭を横に振る。



「ふふふ。まだ貴方は外の世界に執着があるようね。此処には私達しかいない。永遠に…私達だけの世界。不安がることはないのよ…?」


そして至近距離に居る彼女は、プチン、プチンと…僕のシャツのボタンを器用に外していく。


「ふふふ、きめ細やかな綺麗な肌。着痩せするタイプだったのね。ああ…愛しい」


手でなぞられた僕の胸が…拒絶反応に総毛立った。

幸いなのは、それを相手に気づかれていなかったこと。


「さあ…続きをしましょう、玲さん。私と…愛し合いましょう…」


決して恥じ入ることない堂々たる物腰で…彼女は自分の上衣を脱ぐと、下着姿になった。


僕の心は、体は…何一つ反応しなかった。


否――、あるのは更なる拒絶反応だけで。


まるで遊郭に売られた生娘のように、本能的な恐怖感に嘔吐しそうだった。


僕は…出来るだけの意志でもって、抗って暴れ出しそうになる心を抑えていた。


――イヤダ。


"僕"よ、目覚めるな。

僕は…納得したじゃないか。


――ガマンシタクナイ。


これだけねじ伏せた僕の心は、きっといずれは歪んだ形で僕に逆襲をしてくるだろう。


その危険は判るけれど…どうしようもなかった。


「再度確認する。僕が…君を抱けば、必ず櫂を助けてくれるね?」


"エディター"は笑う。


何処までも歪んだ顔で笑う。


僕をざわめかす狂気が、僕の心を殺していく。




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