シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


言えやしない。


駄々っ子玲くん、櫂に恨み持っていたなんて。


だけど聡い玲くんは何かに気づいている。


「ねえ、芹霞。僕…暴言吐いていなかった? 櫂に」


それは酷く真剣な顔で、ちらりと…闇を吸収している櫂に目を向ける。


櫂と煌は頑張っているのに、こんな処でくっちゃべってていいのだろうかという気もしたけれど、如何せん…あたしは玲くんに会えた事で気分が高揚していた。


時折、男2組の視線も感じたけれど…気のせいだと突っぱねる。


「攻撃とか…していなかった?」


酷く…低い、抑揚ない声が向けられた。


心当たりが…あるのだろうか。


そう思ったら、傷ついた櫂の顔が思い出されて、心が痛んだ。


「…暴言、戯言だけだよ」


だけど、玲くんが…それを本音と捉えないのなら。


それは何処までも、"暴言"で。


「櫂も…判っているから」


判っている筈だ。


彼も最終的にそう処理するはずだ、"暴言"だと。


櫂は、確かに揺らいだけれど…何より玲くんを大切にしている。


あたし達にとっての玲くんが、目の前にいる玲くんなら。


玲くんがそれを"暴言"と理解する限り、そして玲くんが…あたし達を信じてくれている限り、それは悪夢の世界の出来事。


そう――処理したい。


どんなに詰られても恨まれても否定されても、あたし達は玲くんが好きなのだから。


愛情の裏返しだと…思いたい。


意識と本音は表裏一体。

どんな聖人でも、人間である限り…必ず反対の心はあるものだと。


――玲は、人間なんだから。


そう言い出したのは…何故か煌で。


――信じるべきは、今までの玲の姿だ。


煌が必死だったという理由からではない。


その言葉はすんなりと心の中で収まり。



それは――

全員の一致した見解となった。



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