シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

『最初だけでいい。彼女を惹きつける男の"心"を手本(モデル)にさせて…貰いたいんだ。とりわけ、深い愛情だ。後は誤魔化す、何とか…』


きっと…七瀬は、恋をしてねえんだろうな。

朱貴に聞けば、てっとり早いと思うけれど…朱貴の心にさえ気づいていない鈍チンなら、迂闊にその提案も出来やしない。


確かに――

愛情だけなら、ここには本気の片想いの男達が3人もいる。


『で…なんだが…。急ぐのは十分判っているんだが…』


歯切れ悪い七瀬の口調に、何だか…予想付いてしまった。


『何せ…初めてだから…時間が、かかる…だろう。皆まで足止めくらわしたくない…。だから…少しでいいから…』


言い澱んだ七瀬に、櫂と玲が口を開こうとした時、


「1人で十分だな、…俺が残る。

だから…お前らは先に行け」


俺は真っ先に言い放ち、反論の余地を与えず直ぐに七瀬に聞く。


「七瀬、こいつらの帰り道、お前サポートできるのか!!?」


暫くの沈黙が、状況を物語る。


そして、七瀬の言葉で紡がれた。


『……。心でも夢でもない世界で…しかも見たこともない…想像すら出来ない…周涅の力であるなら…あたしの力は及ばない…と思う』


即ち、自力でしか道筋は判らないということか。


「煌…。僕が残る。僕の身体であるなら、心は…僕に近い方がいいだろう」


「お前達残せない。俺が…」


ああ、やっぱ櫂と玲が、お得意の犠牲精神を出してきた。


だけど俺は何となく…判るんだ。


こいつらでは駄目だ。


多分――
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