サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
「今日からまた

 一緒に住むから。」

と、笑顔で有喜に告げた。

有喜は少し動揺したが、

1人より2人の方が

気は楽だと思い、賛成した。
 
「じゃあ、

 今度純一が暇なときにでも

 マンション片づけてくるね。」

母は説得しないといけないと思っていただけに、

有喜がすんなりと了解してくれたので

少し驚いたが、

事がスムーズに運ぶんなら

いいだろうと思った。
 
今日から親子2人暮らしが始まった。
 
「お父さんどうしてるかな?」

有喜からこんな

余裕な言葉が産まれてきて、

少しびっくりした。
 
「うーん…。

 どうしてるんだろうね?

 お母さんも最近忙しいから

 あんまり、会いに行ってないわ。」

なにげに返した一言だった。

と言うよりは

それが真実だったが、有喜は

「そうなんだ…。

 私もだんだん

 みんなが忙しいって言う理由で、

 会いに来てくれなくなるんだろうな…。」

有喜は不安な表情をし、

だんだん鬱状態になっている。
 
母はびっくりし、

「そんなことないわよ!

 有喜は私の娘だもん。

 毎日会いに行くわ!」

フォローにならないフォローを

必死でする自分が情けなかった。

言葉には気を付けないと…。

焦りを隠しきれないが、

焦れば焦るほど、

人間無意味な事をする。
 
有喜は

「一人にさせて…。」

そう言い、

部屋を後にした。

有喜は自分の部屋に入ると

布団を頭から被り、

一人鬱状態になっていた。

母は自分の無力さを感じ、

自己を攻めてしまい、

二人の関係はなかなか上手いようには

いかなかった。
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