サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
今日の温泉は

格別に気持ちよかった。

2人は時間が経つのも忘れて

のんびり湯に浸かり

日頃の疲れを癒した。

有喜は温泉に浸かりながら

景気よく鼻歌まで出ていた。
 
「ババンバ・バン・バン・バン♪

 ふぁ~、

 やっぱおんせんはいいわぁ~。

 しかもこの絶景!

 露天風呂ならでわね。

 今度お母さんも

 連れてきてあげよう。

 絶対喜ぶから♪」

旅行というこの空間が、

いつの間にか有喜に

他人を想う程の

心の余裕をもたらせてくれていた。

今日と言う日が

有喜の病気にとって、

どれ程プラスとなるはずだったか、

あの電話が鳴るまでは…。

 
「かんぱーい。」
 
2人は有喜の病気が発覚してから

初めてビールを飲んだ。

久々のビールの味は格別だった。
 
「ここのご飯おいしいねー。

 これがまたビールに合う!

 もうっ、

 最高☆純一

 ありがとう。」

有喜がはしゃぎながら

食べる姿は、

子供のような無邪気さと、

浴衣姿の女性の魅力が

絶妙なバランスでミックスされていて

純一は食事が喉を通らなくなるほど

有喜を抱きたいと感じた。

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