蝶が見る夢
メルトダウン
ハルシオン、デパス、症状の軽い時はソラナックス。
匠の服用する薬の名前はなぜか妙に語感が良くて、あっという間に覚えてしまった。
病院に通うようにさせたのは、私だ。















「ねえ、匠。提案なんだけどさ」


私の腕の中でむずがる匠を、よしよしとあやしながら私は言った。


「思いきってお医者さんに診てもらうのも、ひとつの手立てだと思うよ?」


付き合った当初、あまりに匠の欠勤が目立つので(それも、殆どが無断欠勤)、私は遂にその台詞を口にした。
ずっと言うべきか言わぬべきか悩んでいた一言。
匠が不安げな顔で私を見上げる。
大きな目の端っこを下げて、匠は今にも泣きそうで。
情けないようでいながら、現状、私にはこれが匠の在るべき姿ではある。
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