蝶が見る夢
極論ではある


カチカチと、カッターの歯を鳴らす。
ギチギチと、肉を裂く。
骨に当たっているんじゃないかと思うほどに硬いそこは、ぱっくりと割れはじめ、じゅわりと赤い液体が滲みだす。
一筋、二筋と皮膚を伝って流れ落ちるそれにそっと舌先を這わせると、鉄の味が口内に甘く広がっていった。
痛みはない。
ぎゅうっとつねるように肉を摘むと、どくりと脈打って滴る。
零れる液体はフローリングの板の目に入り込み、私は近くにあったティッシュに手を伸ばして、そっとティッシュで拭き取る。
それでも拭いきれない血液が、不気味に板の目に染みている。
百円ショップで買ったカッターの刃先にも、それは鈍く浸蝕していた。












「あやめちゃん、何その怪我!?」

「へっ?」


驚く主任に、どこも痛みを感じない自分。
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