胸の音‐大好きな人へ‐
ひんやりと冷たいケータイが春佳専用のあたたかいメロディーを奏でた。
開いた画面には絵文字もハートマークもなかったから、本当に春佳からのメールなのかって一瞬疑ったけど、送り主のアドレスを何度確かめても春佳からのものに違いなかった。
距離置く……!?
どういうことだよ、それ……。
わかるように説明してよ……!!
高い崖から海に転落したかのような恐怖が体中を包んだ。
目の前が真っ暗になるって、多分いま使うべき言葉……。
冷静に考えたいのに頭の中はぐちゃぐちゃで、急いで春佳に電話をかけ直そうとしても指先が震えて思うようにケータイ操作ができない。
距離を置きたい。
春佳はそれだけを告げて、一方的に俺との連絡をとらなくなった。
キッチリ閉じられた自室の窓をカタカタ鳴らす12月の寒い風よりも、気持ちは凍りついていくようだった。