しゃぼん玉

メイにとって、初めてのおかゆ。

母·翔子にも作ってもらった覚えがない。

さっきあれだけ吐いたのに、スプーンでおかゆを掬(すく)うメイの手は止まらなかった。


素朴な料理。

なのに、とてもあたたかくて……。

ほんのりと柔らかい塩の味が、口の中に広がっていく。


メイは今まで幾度も嘔吐(おうと)したことがあるけれど、そのあとこういう処置をしてもらったことはなかった。

翔子はいつも、メイの吐く姿を見て嫌悪感をあらわにしていた。

「汚いなぁ。あっち行ってよ」

「自分で片付けなよ?

私は知らないから」

そうやって詰(なじ)られる横で、メイは嘔吐物(おうとぶつ)を片付けていた。


“メグルはこんなばあちゃんに育てられたんだね……。

私と代わってほしいよ”

いつもなら人の親切に裏を感じてしまうのに、この時は体が弱っていたからか、メイは清の厚意を素直に嬉しいと思えたのだった。

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