トツキトオカ
めでたく子作り解禁となった私たち夫婦であったが、私はすっかり「浮かれポンチ」になっていた。

夫に散々「子供はすぐに出来ない」と連呼していた私だったが、実は内心ではまるっきり反対のことを思っていた。

すぐに妊娠できると思っていたのだ。

初めて子作りしたその夜。

「ああ、これでももう妊娠した!どうしよう、私もついに母親になるんだ!仕事も辞めなきゃ、マタニティドレスも買わなきゃ」

馬鹿みたいだが、本当にそんなことを考えていたのだ。

マタニティグッズを扱うネットショップで可愛い洋服を探したり、ウイルスから守る為に会社のデスクに置ける小さな空気清浄機をチェックしたりしていた。

割れながら本当に単細胞だ。

ワクワク、ドキドキ。

だから翌月、予定通りに生理が来た時はとてもがっかりした。

1ヶ月間、すっかり妊娠したつもりで色々想像したり考えていたワクワクドキドキが一気にシュワーと音を立てて萎んでいくようで、大袈裟にトイレでひとり泣いてしまった。

気を取り直し、その月も排卵日辺りを狙って子作りし、期待を胸に膨らませながら毎日を過ごすのだが、またしても生理が来てしまった。

しかも予定日通り、1日の狂いも無く。

そしてそんな繰り返しが半年程続いた。

私は生理が来るたびにトイレで涙を流し、帰宅後はかわいそうな私を慰めてと言わんばかりに夫に泣きついた。

子作りを解禁させる為、夫に「妊娠には半年から1年位かかる」と連呼していたことなどキレイさっぱり忘れてしまっていた。

初めの頃はかわいそうに、大丈夫だよと励ましてくれていた夫も私の矛盾にすぐ着目し、徐々に厳しい言葉を発するようになっていった。

そしてその翌月の日曜日、トイレから涙目で出てきた私に夫は言った。



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