△~triangle~

『蓮のお母さんが……奈緒先生』

俺の口が告げた真実をノラは小さく繰り返すと、思い詰めた様な顔をして微かに俯いた。

奈緒……それは蓮の母親であり、そして今はノラの父親と再婚し、ノラの義理の母となった人。

彼女は幼い蓮を自分の母に預け、そしていつの間にか家に帰って来なくなったそうだ。

俺も詳しい事はよく知らない。

ただ蓮は無意識に、彼女に執着している様に感じた。

……自分を捨て、音楽を選んだ母親。

だからこそ蓮は、ノラを憎んでいるのかもしれない。

自分の大切だったモノを、自分の求めていたモノを手にしている彼女が……羨ましく、そして妬ましい。

そんな思いを蓮は抱えていたのだろうか。
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