△~triangle~

「久しぶりね……元気そうでよかった」

そう言って彼女は私の目の前に立つと、そっと私の頬に手を触れる。

真っ赤なバラのよく似合いそうな彼女は上品なスーツに身を包み、微かに吹く風にサラサラの黒髪を靡かせている。

その美しい彼女の姿に、周りの人々の視線が集まっていた。

「勝手に家を飛び出したりしてごめんなさい……奈緒先生」

その私の言葉に彼女は小さく首を横に振ると、悲しそうに笑った。

「ちょっと……座りましょうか」

そう言って彼女は広場に置かれているベンチに、そっと腰を下ろす。

同じ様に彼女の横に座ると、静かに彼女を見つめた。

全てを知った今、よく見れば彼女は……蓮に似ていた。

黒いサラサラの髪も、抜ける様な白い肌も、少しだけ悲しそうに見える人形の様に整った顔も……蓮によく似ている。
< 292 / 451 >

この作品をシェア

pagetop