△~triangle~

「今日は……いい天気ですね」

勇気を振り絞ってそう声を掛けたが、何故か敬語になってしまい、思わず小さく笑みを浮かべる。

彼女と言葉を交わしたのがあまりにも昔過ぎて、話し方を忘れてしまった。

その僕の言葉に彼女はクスリと吐息を漏らすと、それからそっと僕を振り返る。

「ええ……凄くいいお天気ね」

そう言って彼女は笑った。

それは空に燦々と輝く太陽の様に眩しい笑みで、そして僕の記憶に残る……母の笑みと全く同じだった。

その笑みは僕の胸を締め付け、息も出来ない程に苦しくさせる。

嬉しいのか、悲しいのか良く分からない複雑な感情が沸き上がり、キュッと手を握り締めたまま困った様に笑みを浮かべた。
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