リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「……、どう思う?」

明子の言葉に、隣で身じろぎもせず固まっていた沼田が、呪縛から解き放たれたかのように体をびくんと跳ね起こした。

「ああ。ごめんね。相談もしないで、いきなり、印籠振りかざしちゃって。いや、ここで使わないと、この先、ここの仕事やることは、そうはないだろうから、使うチャンスないなーって」

ふふふと、目を細めていたずらっぽく笑う明子を、沼田は繁々と眺め、少しだけ目元に笑いを浮かべた。

「若いほうの人たちが入ってこなかったら、多分、今回の喧嘩はこれくらいでってことで、手打ちにしたんだと思います。先に営業課と話をしたときもそうでした」
「そっか。戻ってくる人、減ってますように」

明子が指を組み祈るようなポーズを取ると、沼田は面白そうに顔を綻ばせて笑った。
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