リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
ウェデングドレスのためにダイエットした四年と七か月ちょっと前。
体重は五十三キログラムほどだった。

みんなから、綺麗と言われたくて。
夫になるはずだった人にも、綺麗と思われたくて。
必至に。
必至に。
あの手この手で、明子は必死に減量した。


(で?)
(それで?)
(なんで?)
(いまや、七十キログラム超え?)
(いくらなんでも、マズいよね)
(これは、春からさらに、五キログラムは増えてるじゃん)
(増加速度が、半端ないってばっ)


なんてことよ、あえて目を背け続けた結果の報いがこれなのねと、明子は打ちのめされた。


(どうにかしなきゃ)
(関ちゃんに会うまでに)
(文隆くんに会うまでに)
(高杉兄弟に会うまでに)
(どうにか、しなくちゃ、これ)
(こんな、肉襦袢の腹は……)
(見せられないってばーっ)
(いや、見せる予定なんて、まったくないけどね)
(えへへ)


そんなこんなの末に、明子は痩せることを決意した。





小杉明子。
三十一歳。
身長一六七センチメートル。
体重七十一キログラム。
男なし。
女としては、もう、けっこうな崖っぷち。
そんな女に、人生二度目のダイエットに挑むことを決意させた夜は、こうしていきなり訪れた。


挫折は、すべて含まず。
だから、人生二度目の、真剣なダイエット。
そう自分に言い聞かせながら。



タイムリミットは、とりあえず、四か月後。
梅の花が咲き始めるころ。
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