キスはおとなの呼吸のように【完】
わたしは恐怖と緊張からくるどきどきがおさまらなかった。
ぴしゃんとはげしい音がして、引き戸がしまるとカズトは困った顔でいう。

「シオリははじめてだったよね。あの人、酔うといつもあんな感じになっちゃうんだ。せっかく気持ちよくお酒のんでいたのに、つまらない思いさせちゃったね。ごめんなさい」

わたしは首を左右にふった。

「ううん。ありがと」

そういってから、こぼれた酒とガラスの破片が散らばる地面をわたしは見た。
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