キスはおとなの呼吸のように【完】
22.わたしの涙
その音と冷たい風で大上先輩はいっぺんに酔いがさめたようだった。

今まですりガラスが張られていた場所にはぽっかりとおおきな穴があき、先の見えない夜の闇がのぞいていた。

わたしはあわてて視線をふって確認したが、そこにはもう「ワン」と鳴く犬のシールは見あたらなかった。

「すまない」

大上先輩の言葉がむなしく響く。

「帰ってくれ」

カズトはにぎっていた手を力なく離し、割れたガラス扉をうつろに見つめてしずかにいった。
< 304 / 380 >

この作品をシェア

pagetop