キスはおとなの呼吸のように【完】
23.カレの涙
三本酒店にもどると、店のそとの私道にカズトの姿があった。

常連客はみんなもう帰ったのだろう。

ひとりきりでこちらに対し背をむけて、割れたガラス戸と業務用のヴァンのあいだのせまいスペースに窮屈そうにしゃがんでいる。

ぎりぎりの場所に身体をねじこんでいるからだろうか。
まるまった背中とこわばらせた肩が、カズトの身体をちいさく見せていた。
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