冷雨のあと
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 同じ血が流れる。
 父やアルと同じ血。忌まわしきDNA。
 問題を真っ向から見つめられない。誰かが解決してくれる。または時が過ぎ、問題が風化するのを待ち続ける。そんな僕がいた。まさしくそれは忌み嫌っていたアルや父と同じ。
 現実を見つめ、一つ一つの判断を慎重に正しい方に歩んできたはずなのに。僕の体には確実にその血が流れている。
辞めたいと思ったサークルもはっきり「辞める」と言えず、麻紀に「好きだ」とも言えなかった。だが結果的にはサークルは辞めて、麻紀とも付き合えているので、今までこの問題に気付かなかったのだ。
 ただ立ち向かうべき現実に目を背ける。躊躇する姿勢はまさしく父と同じ。
ここで是正しなければ、愚弄していた父のような人生を送ることになるかもしれない。いや確実にその道に進んでいる。

 富山県から上京し、大学三年、二十一歳にして受け継がれた負のDNAに気付く。
このままなら母のような嫁をもらうのかもしれない。そして同じように哀しく情けない人生を歩むのか。
 嫌だ、僕の代でこのDNAの流れは変えてみせる。そのためには自分の臆病さ、問題から逃げようとする姿勢を改めること。母とは違うタイプの女性、精神のたくましい女性と結婚しないといけない。

 僕の高校時代の生活はひどいものだった。
このまま誰か撃ち殺してくれないか、そう思いながら毎日を過ごしていた。
太平洋側の東京に住むようになってから気付いたが、日本海側である富山県は湿度が高い。髪質が細く柔らかい僕は髪型に悩まされた。毎回気に入った髪型にならないので短く散髪し、時折坊主にしていた。

 抜け出せない。この底なし沼からは到底抜け出せない。あきらめと絶望感のなかで僕は悟った。耐えるしかない、もがけばもがくほど僕は闇に沈んでしまう。一筋の光さえ見れずに。
 自分はどうしたらよいのか。この状況を打開する手立ては存在するのか。その答えを多くの書物に求めた。
『他人と過去は変わらないが自分と未来は変えられる』
書物が出した解答に僕は答えることができそうもない。変わることができる〝自分〝が何のやる気もおきない。今、行動を起こすのは時期尚早である。英気を養うためにも、今は悩みに悩みぬいて、期が熟すのを待とう。答えはそれしか考えられなかった。

 
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