冬に降る涙の雨。

「マコ、そろそろ行くよー?」

突然、扉の向こうからカナちゃんの声が聞こえた。

「え…うん」
私は立ち上がり、扉に手をかける。


「「…あ。」」


私が扉を押した途端、カナちゃんが扉を引いたので有り余ってしまった力が、カナちゃんへと押し寄せる。



……私は、カナちゃんの胸の中にすっぽり収まってしまった。


「……っ!!//」

初めて触れる、男の人の胸板。
耳が胸に当たっているから、カナちゃんの心音が聞こえる。


ど、動悸が………っ!!

「……わりぃ。」
そう言いながら、私の背中に手を回すカナちゃん。


は……!?
え!?なにごと!?

なんで、抱きしめ、られてるの……?


あぁ、カナちゃんの匂いがする。
暖かくて、優しいカナちゃんの腕の中。
ドク、ドク。
カナちゃんの心音。

心地よいリズムで刻む心音に比べて私は………超高速。


カナちゃんに、聞こえちゃいそうで怖い……。





< 69 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop