高天原異聞 ~女神の言伝~

「今日は、こんなところかな」

 きりのいいところまで作業を進めた美咲は、そう呟くと書架から離れた。
 下へ降りる階段の手前で積み上げておいた廃棄本を台帳とともに持ち上げる。
 一歩踏み出したとき、がくんと右足の踵が階段の端を二段分滑って宙に浮いた。

「!!」

 身体が後ろに傾いた。
 咄嗟に本を抱きしめた。
 落ちる――そう思った。
 重力に引かれて、背中とお尻を打ちつけることを覚悟した。

 その時。

 ふわりと、一瞬自分の身体が宙に浮いたような気がした。
 誰かに抱きとめられたように。
 そして、そのままとすんと、ひんやりした階段の段にお尻が着いた。
 続いて、靴の踵が。

「……?」



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