高天原異聞 ~女神の言伝~

 慎也が葺根と八塚と共に出てくると、美咲は建速に別れを告げ、慎也と共にアパートへ戻った。
 風呂から上がって髪を乾かして居間へ戻ると、慎也がベッドにもたれて居眠りをしていた。
 自分にとっても長い一日だったが、慎也にとってもそうだったろう。
 疲れていて当たり前だ。

「慎也くん、起きて。寝るならベッドに入って。風邪引いちゃう」

 肩を揺すると、目を覚ました慎也が抱きついてきた。

「ああ、よかった。美咲さんがいる」

「何よ。どこにも行かないわよ」

「うん。何度でも、引き止めるよ。黄泉国には、行かせない」

「……慎也くん」

 優しく抱きしめられて胸が高鳴る。
 きっと、何度抱きしめられても、慣れることなくときめくのだろうと美咲は思った。
 今ここにいてくれる慎也が愛しくてたまらなかった。

「キスしてもいい?」

 囁かれて、静かに頷く。
 美咲が顔を上げると、慎也が優しく唇を合わせてきた。
 舌が絡み合い、吐息が混じり合う。
 そのまま床に倒れ込んでいくところで、

「!?」

 二人は、同時に異変を感じた。
 空間を超えて、何か凄まじい気配を感じる。

 この気配は――?

 体を起こすと、美咲と慎也は図書館へ繋がれた玄関へと向かった。






< 353 / 399 >

この作品をシェア

pagetop