TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「よっぽど、よっぽど嫌な思いをしたんだな……。自殺に踏み切るまでの……そんな嫌な思いを」

クラスでは中心的存在。
性格は底抜けに明るくて、いつもこのクラスを励まして、引っ張ってくれた。
そんな桧野の違う一面を初めて見たわたしは、呆然と涙目の彼を見つめていた。

隣を見ると、どうでもよさそうに舞香が宿題をやっている。
度肝を抜かれた。
こんな深刻そうな状況で飄々と宿題をやる奴っているか?
舞香が天然だってことは分かっていたけれど、ここまで重症だったのか……。

わたしは落胆しつつも、小声で舞香に注意をする。

「舞香、何してるのよ!」
「何って、宿題。忘れたから」
「そうじゃなくて!」

わたしの目をしばらくの間見つめていた舞香が、はあと小さく溜め息をつく。
どうやらわたしの考えていることが伝わったらしい。
だけどその溜め息の意味は何なんだろう。

「あのね」

憂鬱そうに窓の外の景色を見ながら、舞香がわたしに話しかける。
何だろう。流れから行くと桧野の話かな。
そんなことを思いながら、わたしは舞香の黒い瞳を見つめた。
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