TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると？

そんなとき、舞香がぽつりと呟いた。

「わたし……もっと、生きたかった」

その言葉に心の中の何かが砕けた。

今まで二人を客観的に見て、励ましていたけれど、おかれた状況は一緒。
わたしが現実に触れていなかっただけで、二人がいつもよりこの先のことを考えていただけ。
後は何の条件も一緒。

そんなことに、今更気付いた。

大量の悲しみが、一気にわたしに襲い掛かった。
自然と涙が滲んできた。

しっかりと見えているのに、聞こえているのに、意識が朦朧としていた。
自分でも何を考えているのかよく分からなくて、どことなく体がだるくて。
真っ白になった頭でしゃくりあげる舞香の背中をただ擦っていた。

「更沙と、もっと、遊びたかったよぉ……」

わたしもだよ。
そう言いたかったけれど口は動かなかった。

ぼろぼろと締まりなく流れる涙を拭いもせず、わたしは舞香の背中を擦る。
いつのまにか視界はぼやけていき、桧野の姿が見えなくなっていた。

「うぅ……うっ……う……」

前から聞こえる不規則に奏でられる嗚咽を聞きながら、わたしはまるで呪いにかけられたように、大丈夫だよ、大丈夫だよと繰り返していた。