TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
気付けばわたしは寝ていたらしく、桧野に頭を叩かれ起こされた。
もうすでに杉村は来ており、わたしは驚いて起き上がった。

「緊張感のねえ奴」

わたしが起きると同時に、桧野がポツリと呟いた。

うん。そうだよ。
緊張感も何もない。
怖さもあまり感じない。

だって、なんだか、全て嘘みたいで。
死ぬなんてそんな実感、持てないんだもの。

それはいいことじゃないのかなぁ。

何にも畏怖せずにいられる。
怖がっているより、ずいぶんと気が楽だわ。

ああ、もしかして、感情が麻痺しているのかも。

わたしは自嘲気味にくすりと笑った。
やっぱり時間が経つにつれてわたしは人間ではなくなっていく。
感情がなくなった人間はただの人間、マリオネット。
< 170 / 213 >

この作品をシェア

pagetop