TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「いつもここに杉村がいて」

だけど記憶は鮮明に残っている。
わたしは靴を履いたまま体育館にあがり、ゆっくりと館内を歩いた。

「わたしたちはいつもここに集まった」

誰に伝えるわけでもなく、わたしは言葉を放つ。

「バラックはここにあった」

バラックのあった場所に立ち、ふと考えた。

「距離……こんなにも短かったんだ」

わたしたちが杉村の話を聞いていた場所と、バラックの場所。

バラックへの距離が長かった。
距離が長い分、じりじりと迫りくる死を待つ時間も長い。
恐ろしくて、たまらなかった。
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