TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
お盆に乗せられていたのは、コンビニなどで売っているパンだった。
袋に入っているので、毒が入っているとは思いにくい
何の変哲もないパンだけれど、なぜだか食べるのが躊躇われた。

だけどお腹がぐうぐうと情けない音を出すばかり。
わたしは空腹に耐えられず、袋を破り捨て、勢いよくパンにかぶりついた。
周りを見るとみんな威勢よくパンを食べている。

「何なんだろうね。あのおっさんたち。わたしたちのこと縛ったり、パンくれたり」

気が付くと舞香がパンを咥えながら寄ってきた。
わたしは口にパンを入れた状態で返事を試みてみたが、やはり口に物をいれていると喋りにくい。
わたしはごくりとパンを飲み込むと、舞香に返事をする。

「さあね。だけど絶対いい人じゃないってことだけは分かる」
「そうかな? 紐、意外に緩く結んであったし。謎な人だね」

わたしはその言葉にぎょっとして舞香の方を向いた。
舞香はまたしても呑気そうな顔でパンにかぶりついている。

本当にこいつは能天気な奴だな。
そう思ったが、わたしにはもう反論する気力などなかった。
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